2013年5月30日木曜日

箸袋で作る箸置き

私が二十歳だった頃、スナックの女の子に箸置きの作り方を教わったことがある。
彼女の教え方はとても上手で、私でもすぐに理解し作ることができた。
出会った頃は、ただの客と店員の関係ではあったが、私自身飲み屋で働いていたこともあり、同業のよしみで打ち解けるのも早かった。
楽しかった。おそらく彼女も楽しかったに違いない。お互い勝手気ままに好きなことを言い合い笑い合った。
仕事のこと、将来のこと、好きな映画や音楽、お客や上司の悪口などなど...
どこか一緒に遊びに行きましょうと誘われたこともあったが、私自身が水商売の女性とお付き合いするということに抵抗があり、やんわりと断り続けた。
二十歳というまだまだ未熟な年齢のためか、そんな偏った拘りがあったのだ。
私はどうして、あの娘とちゃんと向かい合おうとしなかったのか。何をそんなに拒んでいたのか。
あの娘は、私に箸置きの作り方を教えながら、どんなことを考えていたのだろう。
そんなことを思い出しながら、子どもたちに箸置きの作り方を教えている。


0 件のコメント: